前回の記事に続き、Import Collection/インポートコレクションの制作過程と名称の由来について、お伝えいたします。
2024年6月現在でインポートコレクションのモデルは3つあり、今回で3回目ということで、Import Collectionの制作過程と名称の由来については一旦、最終回となります。
1作目:Izabella/イザベラ
2作目:Void/ボイド
今回はテーラードジャケットとスカートのセットアップ「Artoria」アルトリアについてです。
→Artoria シングルブレストジャケット
→Artoria ダブルブレストジャケット
→Artoria スカート
Import Collectionは、「モデル名がついていること」「生地が選べること」以外に、「意味が込められていること」という裏設定があります。
Artoria/アルトリアの成り立ち
2022年2月頃から、1stコレクションであるウィナーズウール6Bダブルブレストセットアップやワイドスラックスとは対象的な、構築的なジャケットのセットアップを作りたいと考えていました。
ウィナーズウールコレクションのジャケットは、アンコンジャケットです。
アンコンジャケットとは、アンコンストラクテッド・ジャケットの略で、unconstracted - 非構築的なジャケットです。YUUGAのジャケットは、肩パッドや胸増し芯などは使っておらず、裏地は滑りを良くするために袖部分のみで、軽やかでカーディガンのようにご着用いただけるジャケットです。
これとは反対に、構築的なジャケットのセットアップを作りたいと考えていました。くだけた言葉でいうと、より「かっちり」とした印象のジャケットです。
構築的で作り込まれたジャケットがあるブランドは1段階、レベルが高いように感じますし、そういうブランドにしていきたい思いがあります。
そして、それはYUUGAのハイラインであるImport Collectionで実現すべきで、そのようなジャケット(セットアップ)があるとYUUGAのレベルを底上げできると考えました。
また、構築的なジャケットに合わせるのは、すっきりとしたテーパードパンツが良いかと当初は考えていましたが、2022年12月頃まで、ショップを回ってみたり、これまでのYUUGAの商品とのバランスから「より"YUUGAっぽい"のはどんなものだろうか」と考えた末、スカートの方がYUUGAらしさを感じると思い、スカートに切り替えました。
(いつかはテーパードパンツを作りたい・・)
スカートは、やはり蹴回しを大きくしたい癖があり、フラッグシップのIzabellaを踏襲したようなイメージが良いと考えました。全体のシルエットとしてはワンピースであるIzabellaを、ツーピースで再現するようなイメージです。
私たちの中でも、YUUGA=Izabellaのような、方程式が芽生え始めていて、そのシルエットを踏襲する方が、YUUGAらしさ・Import Collectionらしさも増すと思い、決めました。
諸々が決まったところで、パタンナーへ相談したところ、パタンナーも以前から使いたかったジャケットのパターンがあり、それをYUUGAでやりたいと考えていた ということがわかりました。
そのジャケットのパターンは、約20年前にテーラーに特化したパタンナーや縫製士を集めて、莫大な予算と時間を使って研究を重ねて作られたそうで、YUUGAのパタンナーも研究に携わっていました。
せっかく研究して作ったにも関わらず、最終的にはどこにも出回ることなく日の目を浴びずにお蔵入りとなってしまったそうです。
パタンナーは、出回ることのなかったその"20年前のジャケット"を何かの形で出したいと以前から考えていたのです。
そこで、その研究されたジャケットの原型をYUUGAとしてモディファイされたのが、「Artoria/アルトリア」のシングルブレスト&ダブルブレスト ジャケットです。
名前の由来は「運命」
そもそも、YUUGAの立ち上げの経緯自体が運命的・奇跡的に感じていますが、「Artoria/アルトリア」は、私たちが「YUUGAを底上げする、構築的で作り込まれたジャケットを作りたい」と考えていたところに、YUUGAの立ち上げのきっかけからずっと一緒にYUUGAを作っているパタンナーが「研究を重ねた20年前のジャケットをどこかで実現したかった」という思いを持っていて、その2つの思いが重なって実現した運命的なジャケットだと思っています。
もしかして、最初から、引き寄せられたのではないか・・・とか、実はジャケットがお蔵入りになったことも、20年前からYUUGAで姿を変えてリリースされるまで続く、壮大なストーリーだったのではないか・・・とか、そんな「運命」に思いを馳せて、「Artoria/アルトリア」と名付けました。
イタリア語では「仕立て屋」の意味になる「Sartoria/サルトリア」をちょうどもじったようなネーミングでもありますが、今までのImport Collectionの由来でお伝えしてきた、"デザインの見た目上のもう一つの意味であり、Import Collectionの「意味が込められていること」のさらに裏の設定" が、最も色濃く出ているネーミングになっています。
これが解けると、他のモデルも分かると思うのでぜひ考えてみてください。
▼トワル:2023年6月
▼完成:2023年8月
▼お披露目:2023年9月(試着撮影会)