デザインって何?

デザインって何?

前回の問いかけである「アパレル/ファッションデザイナーって何?
これに対する回答は「世界観をクリエイティブで表現すること」でした。

今回の問いかけ「デザインって何?」に対する回答は、ブランドのデザイナーであれば「世界観をクリエイティブで表現されたもの」だと考えます。
動詞が名詞になったイメージです。
もう少し広く捉えると、デザインとは、「その人の考えが反映されて生み出されたもの」のことを指すと思います。

デザインとは美術的な観点の意味合いだけではなく、もっと広い意味で捉えてみると、仕組みを作ったり、設計をすることもデザインに含まれると考えます。
その人の感覚や考えが反映されるからです。

自身から生み出したものは、自分だけのもの

これからアパレルデザイナーとしてやっていこうとしている方や、今スランプになっている方は、もしかしたら、こんなことを思っている人がいるかもしれません。

「洋服をデザインしても、なんだか見覚えのあるものばかり」
「何を描いても、2番・3番煎じのように感じる」
「オリジナリティってなんだろうか」

実際に、最近ご縁あって知り合ったデザイナーさん(ここでは仮にAさん)も、服飾学校に通ってデザイン画をたくさん描いて、上記のような思いでスランプになった時期があったと聞きました。
私も、同じというには大変烏滸がましいですが、同じようなことが頭をよぎる期間はありました。

  • そもそも洋服というのは、長い歴史があって、どうしても同じようなものはある。
  • 似たり寄ったりになってしまうことは、仕方のないことである。
  • オリジナリティというのは、過去の経験や、自分が吸収してきたものが融合して生み出されるものである。

私はこのように考えることで、吹っ切ることができました。

デザイナーのAさんも、同様のことをおっしゃっていました。当時の服飾学校の先生から、「パンツなんて、上に穴がひとつ(胴)、下に穴がふたつ(足)あるという時点で全部同じ。あなたを通して出てきたということが大事。」という趣旨のことを言われてから、吹っ切れたそうです。

自分のフィルターを通して出てきたものなのだから、それは自分だけのものです。
生み出された結果の中に、何かしらの特徴や思いがあるはずです。私はそう思います。

もし、デザインで悩んでいる方が読んでくださっている場合、「外見(絵)」は描いたかもしれません。では、「中身」はどうでしょうか。中身をデザインすると、少し変わるかもしれません。

前回の記事で書いたように、「言わなくても分かる」は辞めます。「似ていない言い訳」を考えて、自分が生み出したデザインの良い所を言語化します。

自分が説明するために選んだ言葉・言い回しを反芻した後に、もう一度、自分が生み出したデザイン(外見)を見てみると、きっと、すっかり「自分だけのもの」になっているはずです。もしかしたら、説明に合わせて、外見をブラッシュアップする場合も出てくるかもしれません。

このような全体の"プロセス"を通して「デザイン」と捉えた時、改めて、デザインとは「その人の考えが反映されて生み出されたもの」と再度読むと、いかがでしょうか。しっくりきませんか。
さらに、ブランドに寄り添って考えた時、「世界観をクリエイティブで表現されたもの」となるわけです。


カルティエの時計で一つ、例を挙げます。
カルティエの「クラッシュ」は歪んでいるのが印象的な時計ですが、私はこれを初めて見た時に、サルバドール・ダリの「記憶の固執」に描かれている、溶けている時計が連想されました。
ですが、このデザインの背景には、60年代にカルティエのロンドンのブティックに来た顧客から「馬車に踏まれて変形してしまった時計を修理して欲しい」と依頼されたことがきっかけで新商品へのデザインとなったそうです。

お伝えしてきたように「どこかで見たことがある」とか「似たり寄ったり」が仮にあったとしても、その人やそのブランドだけの理由があります。
私たちも自分たちのブランドや商品に、理由やストーリーをお伝えできるようにしたいと考えています。

デザインの由来から、突拍子のない話に発展する面白さ

先ほどカルティエの時計の例は、京阪百貨店守口店 トラディショナルスタンダード様の催事でアンティーク・ヴィンテージ時計を取り扱うショップさんとご一緒した際にお話を伺ったためです。
その時にお伺いした時計の例がもう一つ、あります。
カルティエの時計「ディアボロ」は中国雑技(ジャグリング)で使われる、中国ゴマを意味するディアボロが由来となっていて、ラグとリューズのデザインに取り入れられています。
「クラッシュ」もそうですが、そのデザインを見た時に、全くそのストーリーやモチーフが連想されず、「これなんだと思う?」と聞かれた時にきっと正解に辿り着かないであろう由来であることが非常に面白く感じ、私はすごく好きです。

それから、もう一つ、つい最近4月の出来事で、デザインの話から全然違う話になってしまって、大笑いしたことがあります。
今回のブログの冒頭から出てきた「デザイナーのAさん」は、着物を丁寧にほどいてスカートやシャツにお仕立てする人気ブランドのデザイナーさんなのですが、Aさんの工房にお邪魔させていただいた際の雑談でした。

Aさんがふと、ご自身の椅子にかけられた1着のジャンパーを手に取り、「これ見て」と始まりました。詳細をここに書くのは、少し野暮なので、何が起こったのか簡単にお伝えすると。。

それは江戸時代に発令された奢侈(しゃし)禁止令(=徳川禁令)によって、一見すると一色使いでシンプルなのですが、内側はとても派手な柄になっている着物を使って仕立てられたジャンパーでした。
内側の派手な柄は、火消し組が描かれていて、そこから最終的には、「"木場"の由来が消化の終わった木材が運ばれる場所だから。」というところまで話が発展してしまい、「あれ?何話してたんだっけ?」と二人で大笑いしたのでした。

Aさんにはこの日初めてお会いして大変お忙しい中のはずだったのですが、ブランドについての熱いお話や、貴重な資料なども見せていただき、凝縮された刺激的な時間を過ごさせていただきました。

生み出されたデザインは、上記にあげたようにデザインの由来から、文化や歴史の話にまで発展することがあり、深みが増します。

私は、デザイン=「世界観をクリエイティブで表現されたもの」「その人の考えが反映されて生み出されたもの」が、商品単体だけでなく、ブランド自体の価値を高めることにつながると考えています。

 

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Hanae

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