YUUGAデザイナーのHANAEです。今回は「良い服とは」というテーマでお伝えします。
「良い服」という定義について、皆さん色々な観点があるかと思います。
YUUGAが考える、現時点での「良い服はこういうものである」という考えをお伝えできればと思います。
2025/1/11に公開したYoutube動画を元に本記事を掲載しています。動画も合わせてご覧ください。
雰囲気を纏う服
現段階でYUUGAが今たどり着いている「良い服」の定義としては、
「雰囲気がある服」ということが、最大限、YUUGAの考えを表現できている言葉だと思っています。
では、「雰囲気がある」ってどういうことでしょうか。
「佇まいが素敵」だとか
「その服単体だけで、オーラを放っている」とか
を感じられると、「雰囲気があるな」という風に思います。
YUUGAレディースの縫製をお願いしている、プレタポルテの専門工場さんがおっしゃっていた言葉があります。
「私たちは洋服を縫っているのではなく、雰囲気を縫っているんだ」
これはすごく私たちも納得感があり、感動を覚えました。
以前にYoutubeやブログでお伝えしたことがありますが、YUUGAのフラッグシップであるIzabella/イザベラが納品された時の衝撃を今でも忘れません。
その服を単体で見ただけで雰囲気があって、「本当にオーラが放たれている」と思いました。
これは私たちの中ではもうネタのようになっておりますが、ディレクターのNorikiとは、すごく付き合いが長いですが(15年くらい?もうわからなくなってきましたが笑)
イザベラを目の当たりにした時、何も言葉をかわさずスラムダンクの桜木と流川さながらの、初めてのハイタッチを交わしました。
→Izabellaについてのブログ記事
→Youtubeはこちら
YUUGAの洋服ができあがった感動は当然ありながら、「本当に雰囲気がある服っていうのはこういうことなんだ」と実感した瞬間でもありました。
さらに、「雰囲気」の要素を取り出して考えてみます。
積み重ねられた工程から醸し出される雰囲気
1つ目は、「確認の工程が多いこと」です。
プレタポルテの工場さんからは、洋服を仕立てる際には100以上の工程があり、「1回ごとに確認をしている」とお伺いしています。
もし、100個の工程があったとして、確認作業も入れたら倍の200個の工程になるイメージですね。
ただ、私はこの考え方はアパレルや縫製に限ったことではなく、何か業務を行う際、日々の生活の中でもそうだと思っていて
1回1回、自分のやったことに対して確認を行うことで、クオリティが上がるのだと考えます。
そして、毎回の確認作業でクオリティが上がり、それが積み重なったことによって醸し出されるのが、「雰囲気」なんじゃないかなって思います。
YUUGAに関しては、ものすごく変形しているデザインというわけではなく、特にシンプルなものです。そのため、何か"粗"があるとすごく目立ってしまいます。
先ほどお伝えした、「積み重ね」が重要で
真っすぐなはずのものがちょっと歪んでしまっている
縫い目が1つ抜けてしまっている
こういった些細なことで雰囲気というのは崩れてしまうと思いますし
シンプルだからこそ、ごまかしが効きません。
YUUGAにおいてはプレタポルテ専門工場のクオリティが最大限引き出された洋服だと思っています。
ハンガー面は、気にしない
YUUGAのプレタポルテ工場さんから
「YUUGAのお洋服はハンガー面がちょっとかっこよくない時がある」
と教えていただきました。
言われてみれば、たしかにそうかも。。
実は私は、「洋服は着るもの」なので、吊るされた状態である「ハンガー面」は美しくなければならない!とか、そういうことは、気にしたことがなかったのです。
ハンガー面を気にするのはアパレル業界ならではなのかもしれません。
洋服は、元々、平面の生地からできていて、人間の体に合わせて立体的に作っていきます。
2Dから3Dにしていきますが、3Dになったものをまたハンガーにかけたら
また平面っぽくなってしまうので、どうしても形が崩れて、いわゆる「ハンガー面」が良くなくなってしまいます。
例えば、人間の腕は前に稼働するようになっていますが
YUUGAのメンズジャケットも、同じように、肩の部分を前につけて、腕が前に振るように設計されています。
また、YUUGAのレディース Named Collection「Artoria」のジャケットについても
ハンガーに吊るすと、ハンガーが肩におさまらず、突き出てしまう形になってしまいますが
私が着用する時は肩にぴったり合って、とても綺麗です。
人の身体に合わせて作っているものが、ハンガーにかけた時にかっこいいわけではないということは、工場さんにお話を聞いて、確かにそうだなと改めて思いました。
なぜその洋服を手に取るか?を考えたら、「良い生地」が条件だった
YUUGAを立ち上げる際、さきほどの話ではないですが、洋服って基本的にハンガーに吊されて販売されているので、
どうやったら「この服見てみたいな」って手に取るんだろう?
と考えていました。
ハンガーラックに吊るされた洋服が、ぎっちりと並べられたら・・と考えると、側面=袖の部分しか見えないんですよね。
ハンガーを横からみた厚みのたった数センチに全てがかかっている・・・
パッとみて、手に取ってみようって思ってもらうには、「良い生地」を使うしかないなって考えに至りました。
※ここで、派手な生地という思考には至りませんでした(笑)
そこからさらに、「良い生地」ってどういうことか?を考えてみましょう。
YUUGAでは、基本的に「自然由来の素材」を選ぶようにしています。
例えば、コットン、ウール、カシミアなどです。
自然由来の素材ですと、光沢が非常になめらかだと感じます。
そしてその光沢が、YUUGAの思う「良い服」の雰囲気にマッチすると感じます。
もちろん、化学繊維を否定しているわけではありません。化学繊維は、繊維メーカーさんが科学の力と、努力を重ねて作られている素材です。
YUUGAの考えは、「用途による」ということです。
例えば、ポリエステルでできたお洋服は、自宅でのお手入れが簡単で取り扱いがしやすかったり、プリーツ加工など、ポリエステルだからこそ可能な加工があったりします。
YUUGAにおいてはレディースのジャケットを着用する際に袖の滑りを良くするために、裏地にポリエステルを使っています。
ただ、YUUGAにおいては「表地」としては、化学繊維であるポリエステルやナイロンを主とした生地だと、光沢にちらつきがあると感じ、目指す雰囲気とは異なるため採用していません。
私たちも必ずしも目利きができるわけではなく、そういった「感性」で選んでいます。
さきほどお伝えした「良い生地」=天然素材で、光沢が美しいもの ではありますが
縫製の段階においては、良い生地ではない場合もあります。
以前YouTubeでご紹介したことのある、Loropiana/ロロピアーナのウール80%,カシミヤ20%の美しい生地を使って、Norikiのコートやお客様へのご納品物でコートやジャケットを作ったことがありました。
縫製の工程でアイロン処理を行いますが、生地は基本的に縮むので、歪んでしまったりサイズが変わってしまう原因になります。
それを防ぐために裁断に入る前にあらかじめ縮ませて安定させる「スポンジング」という工程がありますが、工場さんに聞いたところ、その生地がかなり縮んでしまったのです。
生地の用尺は少し余裕を持って工場さんにお渡ししたのですが、かなりギリギリになるほど、縮んでしまったという話でした。(足りなくならなくて良かった・・・)
このような話から、見た目上は「良い生地」でしたが、縫製工場とっては良い生地とは言えないのでは・・・と思い、「良い生地」の定義は要所によって変わってくるなと、改めて思いました。
料理に例えて考えると、大事なことがわかる
私はよく、洋服に限らず何かを始める時は、料理に例えて考えることが多いです。
YUUGAを始める際も、そうでした。
例えば新鮮なお肉やお魚を手に入れて、自分が全然料理ができないのにも関わらず何か味つけを頑張ってやってしまうと素材を台無しにしてしまってもったいないと感じます。
せめてシンプルな味付けで素材を楽しむ方が、断然良いと思います。
きっと、一流のシェフの方に調理をしてもらったほうが美味しくなって、素材の良さが引き立ちます。
そして、一流のシェフに任せて食べる料理はきっと、テーブルウェアや食器なども素敵なコーディネートで、さらに楽しめると思います。
YUUGAにおいては、デザインは私が行いますが、それ以外の箇所は「一流シェフ」にあたる方々、
プレタポルテ専門の工場さんや、元々衣装会社の社長としてデザイナーズ系の洋服も手掛けたパタンナーさん達にお願いをしています。
(生地は所謂高級食材にあたります。)
私は飲食に詳しいわけではないので、今の例えが適切ではなくもっと奥が深いものだと思いますが、そんな風に考えています。
まとめ
皆様にとって「良い服」の定義は色々あるかと思いますが
YUUGAで最も表現できる定義は、現段階で「雰囲気がある服」という考えをお伝えさせていただきました。
確認作業によってクオリティを上げていること。ごまかしが効かないシンプルなデザインであるからこそ、プレタポルテ工場のクオリティが最大限引き出されていること。
必ずしもハンガー面が良いわけではないことや、良い生地とはどんな生地か、といったこともお伝えしました。
今後ともYUUGAに関することやアパレル・ファッションに関する情報をお伝えできればと思いますので、引き続きご覧くださると嬉しいです。